(1) オージービーフとカンガルーの関係

 

「安全」なお肉として定着しているオージービーフやラム肉ですが、牛や羊はもともとオーストラリアにいたわけでなく、1788年の入植時に一緒に家畜として持ち込まれました。その後、開拓の努力を続けたことで(開拓史については今後解説)、現在では世界100カ国以上の国々に輸出、日本人が食べる約半分の牛肉はオージービーフと言われるくらいになりました。まさしく世界の胃袋を満たすための食糧の供給国がオーストラリアなのです。

 

本題に戻ります。

 

環境保護に厳しく、日本の捕鯨に反対しているオーストラリアが一方ではカンガルーを間引き(殺処分)しているのはご存知でしょうか? 捕鯨に対して日本側からは、「オーストラリアだってカンガルーを殺しているではないか?」との意見もあるようですが、それを言っては堂々巡りのようにも聞こえます。実はオーストラリア側は好き好んでカンガルーを処分しているのではない事情があります。実はカンガルーを処分する理由には、日本人の牛肉の消費の半分を占める「オージービーフ」を日本を含め海外に安定供給するために必要であった、というお話です。

 

オーストラリアの国土は日本の20倍、人口は現在は2200万ほどですが、この国土に牛の数は2700万頭、羊の数は8000万頭ほど(MLA概要参照)とも言われています。もともとオーストラリアには牛も羊も1頭もいないはずだったのが、入植後200年たち両方あわせて1億頭以上ですから、オーストラリアの環境に少なからず影響を及ぼしているだろう、ということは想像に難くないでしょう。 世界の胃袋を満たすために増え続けた牛や羊がそれまでいたオーストラリアの動物達にどのような影響を与えたのでしょうか? そして、苦渋の決断としてなぜカンガルーを処分するに至ったのでしょうか?

 

この点についてはちょっと回りくどくなりますが、牛や羊をはじめ、ウサギ、ラクダ、カエル、狐など、さまざまな動物を海外からオーストラリアに持ち込んだことで、もともといたオーストラリアの生物へ甚大な影響を及ぼした歴史と反省がオーストラリアの方々の心に刻まれています。

そのため、日本に対し捕鯨反対する(暴力はいけません)一方、それと同じように自国内に対しても環境保護に対する国民の意識が高く、これ以上自然のバランスを崩さないようにするためにどうするべきかを過去の反省から取り組んでいるわけです。

 

では、どのような点なのか環境保護の面から掘り下げてみたいと思います。  

 

(2)へ続く