(3) 感謝の気持ち

 

我々日本人にとって今となっては「オージービーフ」はどこでも手に入る身近な食べ物になっています。しかしこうなるまでにはオーストラリアとしては、おいしくて安全なビーフを生産するのは当然のことで、それ以外にも厳しい自然環境の中で牧草を育て、灌漑を行い、そしてディンゴなどとの野生動物との共存を進めてきた結果であると思えてきます。

 

ちょっと考えてみましょう。もともとオーストラリアの国土がさほど大きくなく、自国民の自給だけのために農産業をおこなう程度であったら、大規模な農場も必要なかったですし、そうなればカンガルーが増え過ぎる、ということはなかったかもしれません。(オーストラリアで生産される牛肉の7割近くが輸出されています)

 

オーストラリアが牛肉を輸出するから、日本が買う、日本が買うから輸出を増やす、、堂々巡りですが、カンガルーが増えすぎてしまった要因を作ったのは日本人を含めた、世界的な牛肉、ラムなどの需要増が影響していると思えてきます。

 

さて、オーストラリアでもカンガルーの頭数をコントロールすることなく、増えすぎれば自然淘汰されることを期待する意見もありました。日本でも都会のカラスの数を減らすために、ごみをむやみに外に置かないことで、効果をあげた方法です。 また、日光の猿山のように人々がエサをやるのを止めればサルは山に戻ってゆくという意見もあります。

 

日本のように都市部が多く、土地が狭い場所であれば効果を発揮しますが、大自然が多く残るオーストラリアでは、カンガルーが増えるだけ増えて固有植物が先に食い荒らされ、絶滅してしまう危機が叫ばれています。生態系の底辺である、植物が減ると、昆虫や受粉するハチなども壊滅的な影響をうけてしまします。 同時に農作物の被害も甚大になるでしょう。

 

このためディンゴの代わりといってはなんですが、人間がカンガルーの数を計画的に調整する、という苦肉の策に至ったのでした。

 

世界の食糧供給国、環境保護国であるオーストラリアとしての悩ましい現実に対して、単純にカンガルーだけの問題ではないことがわかってきました。そしてオーストラリアだけの問題ではないということも。

 

人間にもペットにも食糧は必要です。安全でおいしければなおさら嬉しいはずです。毎日の食卓があるのも、何かしらの犠牲やそれを克服する努力があってこそなんだと私は感じています。

 

今回、自分自身で調べて理解してからは私はカンガルーのお肉を「おいしくいただくことが何よりも感謝の気持ちだ」と思えるようになりました。 ビーフもおいしい、ラムもおいしい!、ルーも!。 と。

 

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さて、次回はではカンガルーをどのように計画的に間引きして数をコントロールしているか、オーストラリアの取り組みについて考察してみたいと思います。

 

(4)へ続く